ページの先頭です
メニューの終端です。

ピックアップドクター(第8回 辰巳智章 放射線科主任部長)【前編】

[2019年10月10日]

ID:442

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

~放射線科医師の仕事、ご存知ですか?~

辰巳智章 放射線科主任部長

ピックアップドクター第8回

ピックアップドクターとは、当院医師の子ども時代や趣味、意外な一面などを取材してご紹介するコーナーです。第8回目は放射線科の辰巳先生に登場していただき、診療にかける思いや、ここでしか聞けない秘密もお伺いしました。

前編の今回は、意外と知らない放射線治療医の仕事についてお伝えします!

放射線科医師のお仕事について教えてください。

放射線科の医師には2種類あって、撮影されたCTやMRIあるいは核医学検査の結果をもとに、各科の先生が参考にするレポートを書く診断医と、患者さんが放射線治療を行うべき患者さんなのか、どの部分にどれだけの放射線をあてたらいいのかを判断する治療医がいます。私は放射線治療の専門医で、もう一人の赤木先生が診断の専門医として働いています。

先生はなぜ治療の方を選択されたんですか。

正直言うと、診断は英語ばっかりで用語が覚えられなくて・・・専門医を取る気がなくなったんです(笑)

まじめな理由としては、当時、治療の専門医を選択される方が非常に少なかったんです。というのも、放射線治療は昔からがんの3大治療のひとつとされていたんですけど、ただその時代の放射線治療っていうのは今と違って、手術もできないし、抗がん剤もなかなか効かないし、いちおう放射線でもやってみるか・・・みたいな扱いをされていたんですね。でも、これからがん治療として進歩するやろなあと思って、治療の方を選択したんです。

市立ひらかた病院ではどのような患者さんが多いんでしょうか。力を入れている分野などがあれば教えてください。

どこの施設でも同じ傾向があるようですが、乳がんの温存術をされる患者さんが一番多いですね。

当院の治療の強みとしては、がんの部分にのみ放射線をあてる定位照射(ピンポイント照射)を行っていることです。専従の放射線治療医がいる病院でしかできないので、枚方市内で行っているのは当院を含めて3病院のみなんです。

放射線治療医の辰巳先生がいるからできることなんですね!診療するうえで、どのようなことを心掛けていますか。

放射線治療というのは、患者さんが自ら受診に来られるわけではなくて、それぞれの診療科の先生が、放射線治療が効果的だと思う患者さんがいれば我々に相談をしてもらって、初めて来ていただくところなんです。患者さんにとっては、放射線治療がどんなことをするのか全くわからない不安な状態で来られるので、なるべく安心した状態で治療を受けていただける環境をつくれるように、心掛けています。
そのために、放射線治療の機械がこんなふうに動くんですよっていう患者さん目線の動画を技師さんが作ってくれたり、もし治療の最中にこういうことが起こった場合はこうしてくださいという案内のパンフレットを看護師さんが作ってくれたりしていて、医師だけでなくスタッフ全員で患者さんになるべく安心して治療にあたっていただけるように取り組んでいます。
治療を開始するまでにも、まず医師が放射線をあてる部位と量を決めて、その後技師さんが、実際に使用する器具なども考慮して、放射線をあてたい部分にあてたい量をあてられるかを確認します。
そのような作業をすべて積み重ねて、初めて患者さんの治療を開始することができるので、放射線治療は医者の独り舞台ではなくて、技師さんや看護師さんとの共同作業で成り立つ仕事だと思って日々業務にあたっています。

放射線治療チームでは年に数回、枚方の某焼肉店で先生がご馳走してくださるという噂ですが。

みんなでってなったら、焼肉がみんな好きで来やすいんですよ。年に数回やったら来れる人は喜んで参加してくれるんで。技師さん、看護師さん、受付の方と合わせて10人ぐらいで行きます。チームでコミュニケーションをとって仕事しやすいようにっていう意味合いもあります。

初歩的な質問なんですが、がんの部位に放射線をあてるとどうなるんですか。

簡単に言うと、細胞が分裂するときに、DNAに変化が起こって分裂できずに死んじゃう細胞死というものがあるんですけども、放射線によって人為的にDNAを変化させて細胞死を起こすことができるんです。放射線の量によっては悪性の細胞のDNAだけにより強く作用するので、これを利用して治療を行っているんです。

がん細胞が分裂するのを止めるということなんですね。

そうなんです。放射線治療の歴史で、こういうがん組織に対してはこれだけの放射線量を与えれば、上手く分裂を止められるであろう、ただそれ以上の量を与えると今度は正常の組織に影響を与えてしまって副作用が出る可能性が高くなるだろうというのが経験則でわかっているので、それを基準に治療を行うんです。

痛みや出血を止めることはできるんですか。

そうですね。骨の転移の痛みとか、あるいは胃癌や大腸がんでもともと手術が難しい方で、内視鏡でも止血が困難な方には放射線で止めるということもしています。

放射線医師として市民のみなさんに伝えたいことはありますか。

まず、がんという疾患は、今は2・3人に1人かかるような病気です。はじめにお話ししたとおり、手術治療・薬物治療・放射線治療が昔からがんの3大治療と言われています。手術治療も薬物治療も進歩しているように、放射線治療も年々進歩しているんですね。がんって、昔はかかったらもう治らないというイメージだったんですけども、今は、治るもしくはどんどん良くなって、がんを持ちながらでも生きていくっていう時代になっていると思うんですよね。そういうことを患者さんの一人一人がとにかく希望をもって治療に関わっていただくっていうことが一番大事なんじゃないかなって思います。非科学的なんですけど、患者さんの、なんとか自分で治してやろうっていう気持ちが、がんが良くなる要因の一つなんじゃないかなって思うところがありますんで、みなさん一人一人そう考えて治療にあたっていただきたいなって思ってます。

気持ちの強い人の方が治療成績がよくなってるなっていうのは肌で感じていますか。

はい、感じてます。はっきりした科学的根拠はないんですけどそういう印象は感じています。

最後に、放射線治療の展望を教えてください。

放射線の治療は本当に日々進歩してます。一般的に病院の治療で使われているエックス線などの光子線と、粒子線、陽子線、重粒子線っていうものでは、少し生物学的な効果が違うということも研究によって明らかになってきています。

また、がんの部分だけに集中的に放射線をあてるピンポイント治療というのがあるんですけど、がん全体にしっかりあてたいということもあって、影響がない範囲にということは十分考慮しながら、少しだけ周りに余裕をもって放射線をあてるんですね。そうすると、どうしても周りのところにも同じぐらいの放射線があたってしまうので、正常の組織に副作用がでてしまうこともあるんです。また、多方向から放射線をあてるので、副作用が出ないとされている少ない量だけども、大変広い範囲に放射線があたっているんですね。

そこで今、放射線治療の世界ではBNCTというホウ素中性子補足療法が実用段階に入っています。ホウ素の化合物を体に注入して濃度を高めることで、がん細胞にかなり特異的にホウ素が取り込まれるんです。そのホウ素に中性子をあてることによって、そこから放射線が発生するというものなんです。だから、人体に影響が少ないとされている中性子を全体に打つとホウ素が固まっているがんの部分のみから放射線が出て、悪いところにしか放射線があたらないと。

今後はおそらく、このような副作用がどんどん少なく、なおかつがんの部分をしっかり治す治療というのが、放射線の治療として進歩していくんじゃないかなというふうには思っています。

我々の第一の仕事は、あてたくない正常の組織に副作用が出ない最低限の範囲で治療を行っていくことです。経験則をもとにしっかりと制御して、患者さんに安心して治療をうけてもらえるよう、引き続き心掛けていきます。

次回の後編では、辰巳先生のプライベートについてお伺いします。チャーミングなお髭の理由も明らかに・・・!

Copyright (C) Hirakata city hospital All Rights Reserved.