市立ひらかた病院は、枚方市地域防災計画において、「災害医療センター」と位置づけられています。 そのため、災害時においては患者の皆さまの生命と安全をお守りすることはもちろん、被災地域の内外を問わず、枚方市の医療救急活動の拠点となっていきます。 今回は、当院の免震・災害対策設備の「ええやん!」をご紹介します。
当院では、停電対策として2回線契約(常用側と予備側)をしております。
非常時の電力供給は、手術室・血管撮影装置室(血管造影室)など重要箇所を非常用発電機で担っています。
特に血管撮影装置の再起動には瞬間的に大容量の電力を必要とし、心臓カテーテル検査を行っている大半の医療機関では停電するとそのまま停止してしまいますが、当院では血管撮影装置の再起動が可能であり、たとえステント治療の途中に停電しても安全に治療を終えることができます。 また、電気配線は機能別に系統を細分化し、必要な負荷に選択的に配電できるシステムになっており、停電時にも食糧や薬剤を保管する冷凍庫や冷蔵庫に安定した電力の供給が可能となっています。
また、電子カルテシステムの運用に重要な役割を果たしているのがUPS(交流無停電電源装置)です。UPSとは、停電や瞬時電圧低下などが発生した場合でもバッテリなどに蓄えられた電気エネルギーを使って、負荷機器へ途切れることなく、一定の時間、交流の電力を送ることを目的とした電源装置です。電源トラブルの影響により、院内のネットワークやコンピュータ端末が停止すると、データ喪失など診療業務に支障をきたす為、UPSは当院の電子カルテ・医療システムの安定稼働に欠かせない存在となっています。
地震対策は①耐震構造・②制震構造・③免震構造の3種類ございます。
①耐震構造とは建物の堅さと強さで地震に抵抗します。②制震構造とは建物内に配置した制震部材(ダンパー)で地震エネルギーを吸収します。大地震の場合でも建物への損傷を軽減してくれます。交換も容易でコストも安い為、一般的な建物やビルに使用されています。次に紹介する③免震構造が当院で採用されている地震対策になっています。免震構造とはアイソレータと呼ばれる積層ゴムによって建物を浮かせ、ダンパーで地震の衝撃を吸収します。ゴムが地震エネルギーを吸収する為、耐震構造や制震構造に比べ地震の揺れを小さくすることができ、建物全体への損傷を軽減します。
当院は外から見るとわかりにくいですが、地下の部分のみ地面に接地しています。 病院玄関等がある1階部分は、道路と駐車場の隙間を金属板で埋めている状態になっています。金属板は地震が起こった際、衝撃により容易にズレを起こし、病院と他の建造物の間に隙間を作ります。隙間ができることで、周りの建物や地面、道路と衝突しない仕組みとなっています。
当院地下に設置されているアイソレータは天然ゴム系積層ゴムと鉛プラグ入り積層ゴムの2種類あります。天然ゴム系積層ゴムは地震発生時に比較的柔らかく変形をし、安定した免震効果を発揮します。当院の地下全体の四方八方に100個以上設置されています。
鉛プラグ入り積層ゴムは鉛プラグの大きさを調整することで振動減衰機能を設計することができます。その為地震の揺れによって周りの建物や地面、道路と衝突しやすいエリアに個別に設置することで、振動や損傷を軽減することができます。当院では病院と駐車場の間にあるスロープ部分に10個程設置されています。
天然ゴム系積層ゴムは半径30cm程度、鉛プラグ入り積層ゴムは40cm四方程となっています。一つ一つは小さなゴムですが、2018年に発生した大阪府北部地震の際、病院内への衝撃をかなり軽減しました。当院地下に行くと地震の揺れで、病院が動いた痕跡が積層ゴムにハッキリと残っていました。
上記の免震構造は定期的に点検が行われています。ネジやバルブがきちんと閉まっているか、破損していないか、きちんと開閉できるのか等、定期点検をし目印を残しています。
次にガスなどのライフラインについての地震対策を紹介します。
地震発生時はライフラインを送るパイプからも地震の衝撃が伝わります。対策を行っていない場合、地震の衝撃によりパイプが損傷し供給がストップしてしまう場合があります。
その為パイプにも地震対策が施されています。病院の敷地内までのパイプは従来の材質になっていますが、病院建物内に入る辺りで一度、比較的柔らかく変形しやすい材質・形状のパイプに切り替わっています。地震によって衝撃が加わった際はその部分が変形することで、破裂・損傷を防ぎます。しかし、変形しやすい材質のパイプのみを使用すると逆に耐久性が落ちてしまう為、建物内のパイプは従来の材質のものを使用しています。
市立ひらかた病院では、災害医療訓練を実施しています。