内視鏡外科手術とは従来の大きく切開する手術と異なり、最新の機器を使用しながら数㎝以下の小さな傷で行う外科手術法です。
腹腔、胸腔、後腹膜腔などにビデオカメラ(径10㎜)を挿入し、腔内の状態をテレビモニターで確認しながら細径の鉗子(径5㎜)や特殊な手術器具を用いて行います。
傷が小さいため痛みが少なく、手術後の回復が早いため入院日数も少なく、美容的にも優れているなど数多くの利点を有します。胃や大腸のファイバースコープ(胃カメラ・大腸カメラ)で行うポリープ切除や粘膜切除などの内視鏡手術と内視鏡外科手術とは全く異なるのでご注意ください。
当科では内視鏡外科手術に最も力を注いでおり、この領域では近畿圏でも先駆的な施設と自負しています。腹部・一般外科領域では約60 %が内視鏡外科手術となり、胆石症のみならず、胃癌、大腸癌などにも内視鏡外科手術を行っています。内視鏡外科手術システムには最新の4 Kハイビジョンシステム、また肝臓癌を可視化できるICG蛍光内視鏡システムを導入しており、手術器具も超音波凝固切開装置や鉗子類など最新・最良のものをそろえ手術を行っています。
病院長、副院長とも内視鏡外科を専門としており、当院でのすべての手術の指導にあたっています。当院では現在まで、甲状腺手術を含む3,500例以上の内視鏡外科手術が行われており、主任部長は執刀医、指導医として4,500例以上の臨床経験があります。
また、泌尿器科や婦人科とも共同で腹腔鏡下手術に取り組んでおります。
内視鏡外科手術は、高度な技術と多くの経験を必要とし、一般的な外科手術に比べ手術時間がやや長くなりますが、その分、患者様の身体的負担と経済的負担をともに軽減できる技術です。
治療技術面にとどまらず、インフォームドチョイス(患者様に十分納得していただいた上で選択していただける治療)、術後ケアの向上に努めます。
手技的に難易度が高いといわれている急性胆嚢炎症例や総胆管結石症例に対しても、腹腔鏡下手術を第1選択としています。また急性腹症や腸閉塞症例に対しても積極的に腹腔鏡下手術を取り入れ、よい成果が得られています。特に急性胆嚢炎では発症後3日間以内の早期に手術を行うことで、より安全に手術が施行でき、15年間開腹移行例はありません。また必ず術中胆道造影検査を施行し、胆道系の異常の有無や遺残結石の確認を行っています。総胆管結石症に対しても新しい胆道ドレナージチューブ(Cチューブ)を使用することで、より低侵襲な治療を目指しています。鼠径ヘルニアの内視鏡外科手術は本邦でも早期に開始した施設であり、手術件数は関西でもトップクラスです。
胃癌、大腸癌に対してはガイドラインに沿い内視鏡外科手術を施行、肝癌に対しても腹腔鏡下肝切除術を行い良好な成績を得ています。
当院の内視鏡外科手術では全例に術中ビデオ撮影を行っており、手術後、ご希望があれば手術中のビデオを見ていただくこともできます。
術式 | 対象疾患 | |
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消化管 | 腹腔鏡(補助下)消化管穿孔閉鎖術 | 交通外傷による消化管穿孔など |
その他 | 腹腔鏡下止血術 | 交通外傷による腹腔内出血など |
腹腔鏡(補助下)腹腔内(消化管内) 異物除去術 |
腹腔内(消化管内)異物(シャントチューブ、胃石)など | |
内視鏡下甲状腺腫瘍摘出術 | 甲状腺腫瘍など |
術式 | 対象疾患 | |
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胆道系 | 腹腔鏡下胆管切開結石摘出術(胆嚢摘出を含む) | 胆管結石、ミリッチ症候群 |
腹腔鏡下胆嚢摘出術 | 胆嚢炎、胆嚢結石症、胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋腫症、胆嚢良性腫瘍、異所性胆嚢、重複胆嚢 | |
内視鏡的経鼻胆管ドレナージ術(ENBD) | 急性閉塞性化膿性胆管炎、閉塞性黄疸 | |
膵 | 腹腔鏡下膵体尾部腫瘍切除術 | 膵内分泌腫瘍、仮性膵のう胞、膵のう胞性腫瘍、膵管内乳頭粘液産生腫瘍他 |
膵嚢胞外瘻造設術(内視鏡による) | 仮性膵のう胞、感染性膵のう胞 | |
脾 | 腹腔鏡下脾摘出術 | 先天性溶血性貧血、特発性血小板現象性紫斑病 |
肝 | 腹腔鏡下肝嚢胞切開術 | 肝のう胞 |
腹腔鏡下肝切除術(部分切除) | 肝細胞癌、転移性肝癌、良性肝腫瘍、肝のう胞、肝膿瘍、肝内結石症 | |
腹腔鏡下肝切除術(外側区域切除) | 肝細胞癌、転移性肝癌、良性肝腫瘍、肝のう胞、肝膿瘍、肝内結石症 | |
食道 | 食道腫瘍摘出術(腹腔鏡下によるもの) | 食道ポリープ、食道粘膜下腫瘍 |
腹腔鏡下食道アカラシア形成手術 | 食道アカラシア | |
腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア手術 | 食道裂孔ヘルニア、傍食道ヘルニア | |
腹腔鏡下噴門形成術 | 食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎、食道拡張症、食道アカラシア | |
腹腔鏡下食道噴門部縫縮術 | 逆流性食道炎 | |
胃 | 腹腔鏡下胃・十二指腸潰瘍穿孔縫合術 | 急性胃潰瘍穿孔、急性十二指腸潰瘍穿孔 |
腹腔鏡下胃捻転症手術 | 胃捻転症 | |
腹腔鏡下胃局所切除術(内視鏡処置を併施するもの) | 胃粘膜下腫瘍、内視鏡的切除の適応とならない早期胃癌でリンパ節転移のないもの | |
腹腔鏡下胃局所切除術(その他のもの) | 胃粘膜下腫瘍、内視鏡的切除の適応とならない早期胃癌でリンパ節転移のないもの | |
腹腔鏡下胃局所切除術 | 胃粘膜下腫瘍、内視鏡的切除の適応とならない早期胃癌でリンパ節転移のないもの | |
腹腔鏡下噴門側胃切除術(単純切除術) | 肥満症、胃平滑筋腫、胃平滑筋肉腫、胃間葉系腫瘍 | |
腹腔鏡下噴門側胃切除術(悪性腫瘍切除術) | 胃癌、胃悪性リンパ腫、その他胃悪性腫瘍 | |
腹腔鏡下胃切除術(単純) | 胃潰瘍、胃平滑筋腫、胃平滑筋肉腫、胃間葉系腫瘍 | |
腹腔鏡下胃切除術(悪性腫瘍) | 胃癌、胃悪性リンパ腫、その他胃悪性腫瘍 | |
腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除によるもの) | 肥満症 | |
腹腔鏡下胃全摘術(単純) | 胃潰瘍、胃平滑筋腫、胃平滑筋肉腫、胃間葉系腫瘍 | |
腹腔鏡下胃全摘術(悪性腫瘍) | 胃癌、胃悪性リンパ腫、その他胃悪性腫瘍 | |
腹腔鏡下食道下部迷走神経切断術(幹迷切) | 十二指腸潰瘍 | |
腹腔鏡下食道下部迷走神経選択的切除術 | 十二指腸潰瘍 | |
腹腔鏡下胃腸吻合術 | 幽門狭窄、十二指腸狭窄 | |
腹腔鏡下幽門形成術 | 先天性肥厚性幽門狭窄症 | |
腹腔鏡下腸管癒着剥離術 | 癒着性イレウス | |
小腸・大腸 | 腹腔鏡下小腸切除術(悪性腫瘍手術以外の切除術) | クローン病、ベーチェット病、小腸穿孔、小腸良性腫瘍、小腸潰瘍 |
腹腔鏡下小腸切除術(悪性腫瘍手術) | 小腸癌 | |
腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴わないもの) | 急性虫垂炎、慢性虫垂炎 | |
腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴うもの) | 急性虫垂炎、慢性虫垂炎 | |
腹腔鏡下結腸切除術(小範囲切除、結腸半側切除) | 腸結核、虚血性腸炎、大腸クローン病、外傷性腸肝損傷、S状結腸軸捻転、嵌頓ヘルニアによる腸壊死、ヒルシュスプルング病、二次性腸閉塞症、回盲部癌、虫垂癌、上行結腸癌、上行結腸カルチノイド、下行結腸癌 | |
腹腔鏡下結腸切除術(全切除、亜全切除) | 腸結核、虚血性腸炎、大腸クローン病、外傷性腸肝損傷、S状結腸軸捻転、嵌頓ヘルニアによる腸壊死、ヒルシュスプルング病、二次性腸閉塞症、回盲部癌、虫垂癌、上行結腸癌、上行結腸カルチノイド、下行結腸癌 | |
腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 | 結腸癌 | |
腹腔鏡下腸瘻造設術 | 進行した大腸癌、汎発性の癌性腹膜炎、大腸膀胱瘻、大腸イレウス、大腸吻合部縫合不全 | |
腹腔鏡下虫垂瘻造設術 | 進行した大腸癌、汎発性の癌性腹膜炎、大腸膀胱瘻、大腸イレウス、大腸吻合部縫合不全 | |
腹腔鏡下腸閉鎖症手術 | 先天性腸管閉鎖術 | |
腹腔鏡下腸回転異常症手術 | 腸回転異常 | |
小腸・結腸狭窄部拡張術(内視鏡) | 吻合部狭窄、クローン病 | |
腹腔鏡下先天性巨大結腸症手術 | ヒルシュスプリング病 | |
直腸異物除去術(経肛門(内視鏡によるもの)) | 直腸内異物 | |
経肛門的内視鏡下手術(直腸腫瘍に限る) | 直腸腫瘍(早期癌も含む)、直腸ポリープ、(直腸)粘膜下腫瘍、直腸カルチノイド、直腸腺腫 | |
腹腔鏡下直腸切除・切断術(低位前方切除術) | 直腸腫瘍、直腸癌、クローン病等、腸管の先天異常 | |
腹腔鏡下直腸切除・切断術(切断術) | 直腸腫瘍、直腸癌、クローン病等、腸管の先天異常 | |
腹腔鏡下直腸低位前方切除術 | 直腸腫瘍、直腸癌、クローン病等、腸管の先天異常 | |
腹腔鏡下直腸脱手術 | 完全直腸脱 | |
腹腔鏡下鎖肛手術(腹会陰式) | 鎖肛 | |
腹腔鏡下鎖肛手術(腹仙骨式) | 鎖肛 | |
内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術 | 下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、下垂体性腫瘤、転移性脳腫瘍他 | |
その他 | 胸腔鏡下(腹腔鏡下を含む)横隔膜縫合術 | 横隔膜損傷、横隔膜弛緩症、横隔膜ヘルニア |
腹腔鏡下骨盤内リンパ節群郭清術 | 悪性腫瘍の骨盤内リンパ節転移 | |
腹腔鏡下ヘルニア手術(腹壁瘢痕ヘルニア) | 腹壁瘢痕ヘルニア | |
腹腔鏡下ヘルニア手術(大腿ヘルニア) | 大腿ヘルニア | |
腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術 | 外鼡径ヘルニア | |
腹腔鏡下試験開腹術 | 消化器悪性腫瘍、腹部悪性腫瘍、結核性腹膜炎、その他腹膜炎 | |
腹腔鏡下試験切除術 | 消化器悪性腫瘍、腹部悪性腫瘍、結核性腹膜炎 | |
腹腔鏡下汎発性腹膜炎手術 | 急性汎発性腹膜炎 | |
腹腔鏡下後腹膜腫瘍摘出術 | 後腹膜腫瘤、後腹膜良性腫瘍 | |
超音波内視鏡下瘻孔形成術(腹腔内膿瘍に対するもの) | 腹腔内膿瘍、過生膵のう胞、膵膿瘍、閉塞性黄疸 | |
腹腔鏡下副腎摘出術 | 原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、副腎のう腫、非機能性副腎腫瘍、神経節細胞腫(ガングリオーマ)、骨髄脂肪腫(副腎骨髄脂肪腫)、副腎結 | |
腹腔鏡下副腎髄質腫瘍摘出術(褐色細胞腫) | 褐色細胞腫、カテコールアミン産生パラガングリオーマ | |
腹腔鏡下副腎悪性腫瘍手術 | 副腎癌、副腎皮質癌、副腎悪性腫瘍、(悪性)褐色細胞、転移性副腎腫瘍 | |
腹腔鏡下腎部分切除術 | 腎腫瘍、血管脂肪腫、(腎血管筋脂肪腫) | |
腹腔鏡下腎嚢胞切除術 | 腎のう胞、単発性のう胞腎 | |
腹腔鏡下腎嚢胞切除縮小術 | 腎のう胞、単発性のう胞腎 | |
腹腔鏡下腎摘出術 | 腎腫瘍、水腎症、萎縮腎、腎結核、腎結石症、腎損傷、腎膿瘍、気腫性腎盂腎炎 | |
腹腔鏡下腎(尿管)悪性腫瘍手術 | 腎悪性腫瘍、腎癌、腎細胞癌、腎盂癌、尿管癌 | |
腹腔鏡下腎盂形成手術 | 腎盂尿管移行部狭窄、水腎症 | |
腹腔鏡下膀胱部分切除術 | 膀胱腫瘍、膀胱ポリープ(膀胱憩室) | |
腹腔鏡下膀胱脱手術 | 膀胱脱、膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤 | |
腹腔鏡下尿膜管摘出術 | 臍膀胱瘻、尿膜管のう胞、尿膜管胃常、尿膜管の奇形、尿膜管膿瘍、尿膜管癌 | |
腹腔鏡下膀胱内手術 | 膀胱尿管逆流、尿管膀胱移行部狭窄、巨大尿管、尿管瘤 | |
尿道悪性腫瘍摘出術(内視鏡による場合) | 尿道癌 | |
尿道狭窄内視鏡手術 | 尿道損傷、尿道狭窄症 | |
腹腔鏡下尿失禁手術 | 腹圧性尿失禁 | |
腹腔鏡下内精巣静脈結紮術 | 精巣静脈瘤 | |
腹腔鏡下腹腔内停留精巣陰嚢内固定術 | 停留精巣、腹部停留精巣 | |
腹腔鏡下造腟術 | 膣欠損 | |
腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術 | 子宮内膜症 | |
腹腔鏡下子宮筋腫摘出(核出)術 | 子宮筋腫 | |
腹腔鏡下子宮腟上部切断術 | 子宮筋腫、子宮腺筋症 | |
腹腔鏡下腟式子宮全摘術 | 子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮頸部異形成、子宮内膜異形増殖症、子宮内膜腺様のう胞性増殖症、異形子宮内膜増殖症 | |
腹腔鏡下広靱帯内腫瘍摘出術 | 広靭帯内腫瘍 | |
子宮附属器癒着剥離術(両側,腹腔鏡) | 子宮内膜症、卵管卵巣炎、骨盤内炎症性疾患、骨盤内炎症、卵管卵巣周囲癒着症 | |
卵巣部分切除術(腹腔鏡) | 多のう胞性卵巣、卵巣出血 | |
卵管口切開術(腹腔鏡) | 卵管采閉鎖による不妊症、卵管留水症、卵管閉塞 | |
卵管結紮術(両側,腹腔鏡) | 避妊 | |
腹腔鏡下多嚢胞性卵巣焼灼術 | 多のう胞性卵巣 | |
子宮附属器腫瘍摘出術(両側,腹腔鏡) | 卵巣嚢腫、卵巣腫瘍、卵管留膿症、卵巣および卵管の捻転 | |
卵管腫瘤全摘除術(両側,腹腔鏡) | 卵管留水症、卵管留膿症、卵管留血腫、子宮外妊娠、卵管妊娠 | |
子宮卵管留血腫手術(両側,腹腔鏡) | 卵管留水症、卵管留膿症、卵管留血腫、子宮外妊娠、卵管妊娠 | |
卵巣腫瘍摘出術(両)(腹腔鏡) | 卵管留水症、卵管留膿症、卵管留血腫、子宮外妊娠、卵管妊娠 | |
卵管全摘除術(両側,腹腔鏡) | 卵管留水症、卵管留膿症、卵管留血腫、子宮外妊娠、卵管妊娠 | |
腹腔鏡下卵管形成術 | 卵管狭窄症、卵管性不妊症、卵管通過障害、卵管閉塞 | |
子宮外妊娠手術(腹腔鏡) | 子宮外妊娠 | |
性腺摘出術(腹腔鏡によるもの) | 停留精巣、性分化異常症、性同一性障害 |