当院の人工股関節置換術(THA)は、その進入法とインプラントの固定法に特徴があります。
先ず、進入法はDall法を採用しています。前側方侵入で大腿骨の一部を、筋肉を付けたまま外してインプラントを設置し、外した骨を筋肉と一緒に元に戻して固定することで、股関節周囲の筋肉を完全に温存する方法です。この外した骨が癒合するのに少し時間がかかりますが(3~5週間)、術後の股関節機能の回復には最も適した手術です。
次に固定方法ですが、インプラントの固定に骨セメントというアクリル樹脂を使用します。THA術後の合併症の一つに「インプラントのゆるみ」があります。これは、せっかく固定したインプラントの固定が破綻して、痛みや機能障害、脱臼、骨折などの大きな合併症の原因になります。この骨セメントを使用した固定方法は歴史があり、インプラントの耐久性において最も信頼の置ける固定方法です(初期のものでも術後20年で8割、術後25年で5割のインプラントが生存)。THAの歴史は70年を超え、今までに様々なインプラントが誕生しては、成績不良により生産中止になってきましたが、その中で最も耐久性に優れた固定方法です。インプラントにも改良がなされ、今までの長期成績はさらに向上が期待されており、今まで約15年の経過では、以前のものの途中成績を大幅に上回っています。