股関節外科(特に股関節鏡視下手術)
術式 | 件数 |
---|---|
股関節鏡手術 | 約350 |
人工股関節置換術 | 約900 |
人工関節再置換術 | 約100 |
寛骨臼回転骨切り術 | 約120 |
キアリ(Chiari)骨盤骨切り術 | 48 |
外科的脱臼手術 | 26 |
当科で行っている手術をご紹介します。
単純X線ではハッキリとした臼蓋形成不全の無いような方で、痛みが続く方にはほとんどの場合股関節唇損傷を伴います。特に60歳以下の若い方でなかなか取れない股関節痛を訴える患者さんがおられましたら、是非ご紹介頂ければ幸いです。
当院では、Doll進入法で手術を行っています。他の方法との違いは、筋腱の切離なく広い術野で安全にインプラントを設置できることです。術後の機能回復は、大変良好な手術法です。
当科で行っている手術について、紹介します。
股関節の痛みの原因は様々なものがありますが、その多くに股関節唇損傷が関与しています。X線検査で正常に見える股関節痛の実に9割に股関節唇損傷があると言われています。
この股関節唇とは、股関節の骨盤の受け皿の口の周囲についている線維の輪っかのことであり、股関節の安定性と、軟骨の保護の役割を担っています。この股関節唇がなにかの原因で損傷されるのが股関節唇損傷です。大きく分けて股関節が不安定性から発症するものと、安定だけど関節の動きの中で骨盤と大腿骨の衝突から発症するものがあります。特に後者はインピンジメント障害と言われ、肩や足関節などにもあるスポーツ障害とよく似た特徴を持っています。普段は痛くないけど、スポーツをすると痛いという多くの若年者の患者さんがいます。つまり、股関節唇損傷発症年齢のピークは2つあり、1つはスポーツ関連の発症が20歳付近にあり、もう一つは関節症発症年齢の40歳代にあります。
図1:股関節唇損傷
一般人で骨にごくわずかな変形がある場合(単純X線では診断できないもの)には、日常生活動作や社会生活を行っているうちに関節軟骨障害が進行して壮年期から中年期になって発症するものがあります。その変形は骨盤側の骨のでっぱりが原因で関節唇が損傷されるpincer typeと大腿骨頚部のくびれが無かったり、でっぱりがあったりのcam type、そのどちらもが混在するmixed typeの3つに分類され(図②)、cam病変があるものは、骨盤側の軟骨に障害が起こって、変形性股関節症の原因になることが分かっています(図③)。さらに、高年例でもスポーツ愛好家で60歳を過ぎてから発症されるという方もおられます。そのような方でも、痛みの原因が股関節唇損傷や関節軟骨障害であれば、最小侵襲手術である関節鏡視下手術が可能です。
図2:変形のtype
図3:軟骨の障害
股関節唇損傷の痛みの特徴は、最も多く感じるのは股関節前面で、殿部のみの痛みの場合は、むしろ腰椎疾患のことが多いです。また、動作の際に痛みがあるが、歩行は比較的問題ないことが多いです。
変形性股関節症には様々な原因があり、FAIによって発症するもの、股関節が不安定(寛骨臼形成不全/臼蓋形成不全)から起こるものなどがありますが、後者から変形性股関節症に移行するものが日本には多いと言われています。後者の寛骨臼形成不全では、病気の進行度が4段階に分かれており、関節の骨に問題が無いものを前股関節症期、一部に軽度の骨の変化や関節の隙間(関節裂隙)の少し狭い部分が現れる「初期」、関節の荷重する部分の一部がかなり狭くなってしまっている「進行期」、荷重部分の関節裂隙がほとんど無くなってしまう「末期」とそれぞれ呼びます。その内の前股関節症期・初期においては、関節温存手術として骨切り術や、股関節を切開して直接関節内の処置(外科的脱臼手術)を行います。進行期末期には主として人工股関節置換術を行います。また、人工股関節置換術を受けた方で、調子が悪い方には再置換術が必要な場合もあります。